『危機管理八策~日本政府の危機管理体制再構築のための8つの提言』




日本大学法学部・福田充研究室は、2011年3月に発生した東日本大震災と福島第1原発事故、そしてそれに対する
日本政府の対応を受けて、日本政府の危機管理体制の上備がその被害を拡大させたことを確認し、これまでの自己の
研究活動に対する責任を痛感した。今後こうした人災を二度と繰り返さないためにも、日本政府の危機管理体制を再構築
する必要性を指摘し、以下の八策を提言する。日本政府にこの8提言の検討を望むものである。

日本大学法学部 福田充研究室(2011年4月16日).


【提言1】
 ●日本に危機管理庁を創設する。
 機能上全の縦割行政に横軸を通す「情報省《も設立し、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などのインテリジェンス・
 コミュニティと連携しながら情報収集・共有・発信する。その危機管理庁が非常時には警察、消防、自衛隊を共同運用できる
 体制を構築する。

【提言2】
 ●国家安全保障会議を設立する。
 地震や津波等の自然災害、原発事故等の大規模事故、エネルギー安保、テロリズム、戦争、サイバー攻撃等あらゆる有事に
 統合的に対応できる政府機関を再構築し、内閣機能強化のための法制度を構築。有事の想定をタブーにせず、
 全ての有事に統合的に対処する。

【提言3】
 ●非常事態法を制定する。
 非常事態法を制定し、首相の非常事態宣言により平常時とは異なる体系の緊急事態対応に法制度を切り替える仕組みを構築する。
 これにより平時の規制を取り払い、迅速で大規模な災害対策を実施することが可能となる。憲法にも規定を追加し、
 災害対策基本法や国民保護法を再統合する。

【提言4】
 ●重要社会基盤施設の防護監視を強化する。
 重要なライフラインである、電力、ガス、水道、通信、交通を中心に、他にも食糧、エネルギー、金融、教育施設など重要施設の
 防災、防護体制を強化し、危機への想定、シナリオ、シミュレーションのレベルを強化する。危機をタブーにせず対応する。

【提言5】
 ●リスク・コミュニケーション、クライシス・コミュニケーションの構築と政府の情報管理、情報公開の徹底。
 危機事態における政府の情報収集能力を高め、自治体や関係機関との双方向的コミュニケーションを強化し、
 その元でオーソライズした情報を社会に積極的に情報公開する方策を構築する。

【提言6】
 ●世界に向けたパブリック・ディプロマシーの強化。
 平時だけでなく危機事態においても、日本の正確な情報を迅速に世界のメディア、市民に向けて発信する政府の情報発信機能を
 強化する。風評被害を防ぐためにも新しいメディアを活用した広報外交、広聴外交、民間外交の戦略を構築し実行する。

【提言7】
 ●日本社会全体の防災リテラシー、クライシス・リテラシーの強化。
 学校や地域で災害や危機に対する社会教育をより充実させる。自治体と連携して、より現実的なハザードマップの作成、
 避難所・避難経路の見直し、避難訓練の強化など、防災リテラシーを強化するためのソフトを充実させる。

【提言8】
 ●危機事態から国民を守る情報メディア・システムの強化、再構築。
 災害でダウンしない防災無線、空振りしない緊急地震速報、切断されない通信網、ネット安否情報システムの構築から、
 被災地で有効なコミュニティFMや地方紙を支援する仕組みまで、災害に強いメディア・システムを構築する。

以上。



FUKUDA, Mitsuru. Nihon University, College of LAW. JAPAN.

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